鶴見線(つるみせん)は、神奈川県横浜市鶴見区の鶴見駅と神奈川県川崎市川崎区の扇町駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(幹線)である。この他に以下の支線を持つ。 神奈川県横浜市鶴見区の浅野駅から分岐して海芝浦駅までの支線(通称海芝浦支線) 神奈川県川崎市川崎区の武蔵白石駅から分岐して大川駅までの支線(通称大川支線)
58キロバイト (7,542 語) - 2020年12月15日 (火) 10:40




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魅力のある路線。

 緊急事態宣言もたけなわでございますが、予定通りお開きにしてもらいたい今日このごろ。乗り鉄としましては「自粛ムードが落ち着いたら行きたいところリスト」などを作って楽しみたい。しかし、いざ出掛けるにしても「密」は避けたい。

【画像】浅野駅はネコの集会所

 そんな乗り鉄さんにピッタリの路線があります。「JR鶴見線」です。京浜工業地帯を走るローカル線です。今回はこの路線をじっくり愛でて楽しむ「10のポイント」を紹介します。

●【鶴見線のひみつ:1】日中、休日はガラガラ

 鶴見線は工業地帯の通勤路線です。鶴見駅から2つ目の「鶴見小野駅」付近には高校や専門学校もあるので通学路線でもあります。

 従って、平日の朝は通勤通学ラッシュになります。3両編成の電車が、鶴見駅から1時間あたり11本も発車します。通勤先は工場が主ですからリモートワークは難しいでしょう。いまでも混雑している路線です。

 しかし、通勤通学時間が終わればお客さんはグンと減ります。多くの工場が休みになる土日祝日もお客さんが少なく、3両編成の車内はガラガラ。日中の鶴見駅は1時間に3本の電車しかありません。それも3方向に分岐しますから、海芝浦駅行きは80分おき。扇町駅行きは2時間おきになる時間帯もあります。さらに大川駅行きは7時台と8時台に2本、「8時26分発の次は17時13分」です。だから都会のローカル線と呼ばれるのですね。

●【鶴見線のひみつ:2】関係者以外乗降禁止の「海芝浦駅

 鶴見線の名物といえば「海芝浦駅」。京浜運河に接する駅です。この駅は「改札口を出られない駅」として知られています。なぜなら、海芝浦支線全体が東芝の敷地に沿っており、改札口は東芝工場の通用門になっているからです。この駅の改札を通れるのは「東芝の社員で許可証を持っている人」だけなのです。

 しかし、海芝浦駅は京浜運河の眺めがとても良い。首都高速湾岸線が開通した後は「つばさ橋」を眺める景観トレンディースポットとしても話題になりました。外に出られない駅を珍しがって訪れる鉄道ファンもいますし、国鉄時代の規則に大らかだった時代は、プラットホームで釣りをする人もいたそうです。もちろん現在は釣り禁止です。

 プラットホームの端には簡易Suica改札機があるため、Suicaを持っていれば改札口から出られなくても精算の必要はありません。紙のきっぷで訪れたならば、きっぷを回収箱に入れます。帰りは乗車証明書発行機で証明書を受け取り、到着駅で精算します。

●【鶴見線のひみつ:3】海芝浦駅の先に「公園」がある

 海芝浦駅は改札口から出られません。しかし「海芝公園」という公園が隣接しています。海芝浦駅が話題になり、訪れる人が増えたことを受けて、1995年に東芝が敷地を提供し公園を作ってくれました。粋な話ですね。

 公園には生け垣に囲まれたベンチもあり、恋人同士の語らいにもピッタリです。海芝公園の誕生をきっかけにして、海芝浦駅デートスポットとしても人気になりました。

 海芝公園からはレインボーブリッジつばさ橋、運河を行き来する船、羽田空港を発着する飛行機が見えます。ドリンクの自動販売機トイレもあります。密を避けて訪れるには良い場所です。入場無料、開園時間は9時から20時30分まで。ちなみに元日は始発電車の到着時に開園し、初日の出を眺められます。

●【鶴見線のひみつ:4】浅野駅の「三角ホーム」はネコの集会所

 本線と海芝浦支線が分岐する「浅野駅」は、分岐の内側に三角型のプラットホームがあります。

 このプラットホームは日当たりが良いせいか、日中はにゃんこがひなたぼっこする姿を見られます。鶴見線は全体的にネコが多い路線とも言えそうです。本線の線路を境に海側が工場地域、反対側は民家が多く、ネコにとって住みやすい地域なのでしょう。

 ちなみに駅名は、埋め立て事業を進めた実業家の浅野総一郎氏が由来です。浅野氏は埋め立て地に工場を誘致するため、貨物輸送線路として鶴見臨港鉄道を建設します。この路線が戦時中に国に買収されて国鉄の路線になり、JR東日本に継承されました。

●【鶴見線のひみつ:5】大川行きは武蔵白石駅に「停まらない」

 鶴見線には3つの終着駅があります。本線の「扇町駅」、海芝浦支線の「海芝浦駅」、大川支線の「大川駅」です。全て鶴見駅から直通電車で行けますが、中でも大川支線は日中に便がなく訪れにくい路線といえます。

 大川行きは「武蔵白石駅」には停まりません。大川支線は駅の直前で分かれていきます。浅野駅のように三角プラットホームがあってもいいのに、と思います。

 実は、大川支線にも武蔵白石駅がありました。……というより、もともと大川支線は武蔵白石駅と大川駅間を往復運転する路線でした。鶴見方面から大川駅へ行くときは武蔵白石駅乗り換えていたのです。しかし、それでは不便と言うことと、当時の小型の電車から現在の電車に切り替えるときに、武蔵白石駅プラットホームが大きな電車に対応できなかったためにこうなったのだそうです。

●【鶴見線のひみつ:6】扇町駅は「工場夜景」がナイス!!

 鶴見線本線の終点、「扇町駅」は工場地帯のど真ん中にあります。この街の風景は夜がオススメ。LED水銀灯、赤い警告ランプなど、さまざまな色の灯火が建物を照らします。工場の引き込み線跡もあり、廃線ファンにもグッとくる風景でしょう。

 鉄道ファンなら見ておきたい施設が「JR東日本の川崎発電所」です。JR東日本は川崎に火力発電所、新潟県十日町市に水力発電所を保有し、首都圏の電車や駅に送電しています。

 東日本大震災後に電力不足になったときは、この発電所が東京電力に電力を提供しました。JR東日本は将来、この発電所を水素エネルギーに切り替えて、CO2排出量を削減する構想を持っています。

●【鶴見線のひみつ:7】南武線乗り換えられる「浜川崎駅」の隠れたワナ

 “鉄道ファン”的な鶴見線の見どころは「浜川崎駅」です。

 この駅と南武線支線の浜川崎駅は公道を隔てて向かい合う位置関係にあります。JR東日本は「同一駅」と見なしており、鶴見線南武線乗り換えるときは運賃が「通算」されます。

 しかし注意したいのはSuicaユーザー鶴見線南武線を乗り継ぐときは、それぞれの駅の簡易Suica改札機をタッチしては「いけません」。そこで運賃が精算されてしまうからです。何だかワナのようです。

 ちなみに、鶴見線の浜川崎駅から扇町駅方向へ進むと、貨物列車用の線路がたくさん並ぶ場所があります。鶴見線の名物は貨物列車。化学製品や米軍横田基地向けのジェット燃料輸送が行われます。この地点を介して鶴見線南武線とつながり、貨物輸送に役立っています。でも旅客電車だけは直通しません。南武線鶴見線が直通すれば、工場に通勤する人には便利だと思いますけれどね……。

●【鶴見線のひみつ:8】国道駅は「昭和のまま」時が止まっている

 鶴見駅のとなりの「国道駅」。駅名は国道15号線に由来します。昭和5(1930)年にできた頑丈なコンクリート製高架橋の上にある駅。前述したセメント王の浅野総一郎氏の存在感と言えそうです。

 高架下の様子は昭和5年のまま変わらず。多くの映画やドラマのロケ地としても使われました。かつては商店も多かったようですが、2021年現在は居酒屋さんが1軒だけ。店名は「国道下」です。鉄道下、国道となりではないのか……。「国道駅下」が縮まったのかな。

 国道駅の近く、国道沿いにはコンビニがあります。ここで何かを買って、鶴見川の川岸や芝浜公園でランチにするのもお勧めです。

●【鶴見線のひみつ:9】鶴見駅の「頭端プラットホーム」と連絡改札口、それは鶴見線ワンダランドの入園口

 鶴見駅に戻ってきました。鶴見線鶴見駅京浜東北線などより高い位置にあります。これは前述した通り、鶴見線はまず鶴見臨港鉄道として開業したためです。

 鶴見線は貨物線として浜川崎側で国鉄と直通しており、後から旅客輸送のために鶴見駅へ延伸しました。このとき、鶴見川を鉄橋で渡り、そのまま国道、京急電鉄線、国鉄線を高架で乗り越えて鶴見駅に至りました。

 国道駅鶴見駅の間には「本山駅」もありました。近くの曹洞宗大本山総持寺への参拝輸送を見込んでいた駅。国鉄に買収される前に廃止されましたが、今でも島式プラットホームの遺構が残っています。ちなみに総持寺は昭和の映画スター石原裕次郎さんの墓所としても有名です。

 さて鶴見駅。JRの駅にしてはちょっと雰囲気が異なり、行き止まり式のプラットホームになっています。「頭端式プラットホーム」といいます。始発駅の頭端プラットホームは私鉄の始発駅の典型です。機関車の付け替えが要らないため電車を前提とした建築です。隣のプラットホームまで階段を使わず歩いて行けます。

 でも、京浜東北線乗り換えるときに「連絡改札口」があります。同じJR線同士なのに改札口がある。これこそ鶴見臨港鉄道だった名残です。現在も撤去されない理由は、鶴見線のほとんどの駅が無人駅だから。ここでお客さんのチェックを行います。

 つまりここは「鶴見線ワンダランドの入園口」というわけです。

●【鶴見線のひみつ:10】燃料電池車実験で未来を先取り

 昭和レトロ感たっぷりの鶴見線に「鉄道の未来」がやってきます。

 2022年3月から水素燃料電池で動くハイブリッド車両の実用実験が始まります。水素と酸素を反応させて発電し、その電力でモーターを動かし、蓄電池に充電する燃料電池ハイブリッドシステムを搭載します。

 燃料電池車両はCO2を出さないシステムとして、非電化ローカル線への導入が期待されています。電化済みの鶴見線で実験する理由は、川崎市が臨港地域で水素エネルギーの活用を進めているからです。

 この試験車両「HYBARI」は2両編成のため、鶴見線では混雑時間帯を避けた日中や休日の運行になると思われます。まさに沿線散歩にピッタリな電車です。

鶴見線、昼も夜もネコちゃんも工場夜景も昭和も未来も愛でられます

 今回の鶴見線、夜の写真は日本旅行2020年12月19日に開催したツアー「貸切列車で行く夜の鶴見線探訪 港湾・工場夜景の旅」に参加したときのものです。

 夜の工場周辺はカメラを持ってひとりで歩くと怪しまれそうですし、暗い道をトラックなどが行き交うため危険です。ツアー行動で巡れば安心です。日本旅行は今後もこのツアーを続けていきたいとのことなので、感染症収束後の募集を待ちましょう。

 昼の写真は、実は2009年6月に撮影したものです。10年前も今もほとんど変わらない景色がスゴイです。緊急事態宣言が解除されたら、乗り鉄リハビリに「鶴見線ワンダランドの旅」いかがでしょうか。

(杉山淳一/乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。JR路線の完乗率は100%、日本鉄道全路線の完乗率は99.69%<2020年10月時点>)

都会のローカル線ワンダーランド「鶴見線」


(出典 news.nicovideo.jp)