(出典 charitetsu.jp)


コロナの中での廃止

―[シリーズ・駅]―


 毎年3月は鉄道各社のダイヤ改正のシーズン。今年は秋田や新潟、茨城、高知の各県で計4駅の新駅が誕生するが、一方で廃止となるのは10倍以上の43駅(※4月1日廃止の日高本線鵡川~様似間含む)。そのうち42駅は北海道だ。

 なかでも旭川~稚内を結ぶ宗谷本線は、一気に12駅が廃止。そこで3月13日で長い歴史に終わりを告げる各駅を前編・後編の2回にわけて紹介。これまで複数回の訪問歴を持つ筆者が撮影した写真の数々とともにお届けしたいと思う。

◆①南比布駅(みなみぴっぷ)

 始発の旭川駅から14.7キロの場所にある南比布駅(北海道比布町)は、今回廃止になる中ではもっとも南に位置する駅だ。

 しかし、鉄道は特急や快速は仕方ないとしても普通列車が1日上下線24本中12本が通過。それでもほかの廃止予定の駅に比べると、周辺にはまばらながらも住宅の数は一番多い。

 駅は列車1両分の短いホームが1本のみで、雪が積もってわかりにくいが北海道以外の地方ではあまりお目にかかれない板張りだ。

 1955年の開業直後には1日約50人が利用していたが、JR北海道の統計によると2015~2019年の同駅の1日あたりの平均乗降客数は3人以下(※利用人数に応じて「10名超」「10名以下」「3名以下」「1名以下」の4ランクで区分け)。

 すぐそばには宗谷本線とほぼ並行する形で旭川~稚内を結ぶ国道40号線の陸橋があり、こちらはバス旭川からのバスがほぼ1時間に1本。バスの利便性のほうが高く、通学の足としても困ることはなさそうだ。

◆②北比布駅(きたぴっぷ)

 南比布駅の2駅隣の北比布駅(北海道比布町)は、旭川のある上川盆地の北端に近い田園地帯ど真ん中の無人駅。冬場は一面雪原と化し、駅から300メートル圏内には農家が3軒あるだけだ。

 1日の平均利用客は1人以下で、通勤・通学で利用する者は皆無。この駅もホームはウッドデッキで1両分の長さしかない。駅舎はなく、代わりに除雪用具の物置兼用となっている木造の小さな待合室があるだけ。床は砂利敷きの簡易的なものだが、2014年に設置された比較的最近の建物なので室内はキレイだ。ただし、トイレはなく駅周辺に公衆トイレコンビニは一切確認できなかった。

 そのため、長時間待つのは大変そうだが、田舎の無人駅ではおなじみの駅ノートにはメッセージがびっしり。なかには駅に降り立つ萌え系美少女キャラを描いた見事なイラストもあり、鉄道ファンたちの愛情を感じる。きっと彼らの多くもトイレを我慢しながら下車後、次の列車が到着するまで待っていたに違いない。

◆③東六線駅

 その北比布駅からさらに4駅、北に20.2キロ進んだところに位置するのが東六線駅(北海道剣淵町)。このあたりは北海道の農村地帯だが、この付近は線路の両脇に防風林が続いているため、まるで雪深い森の奥にいるような気分だ。

 そんな同駅の待合室となっている古びた小屋には「東六線乗降場」の文字。実は、ここが駅として当時の国鉄に認められたのは1959年のこと。開業した1956年からの3年間は東六線仮乗降場が正式な名称で、あくまで仮設の乗り場に過ぎなかった。

 北海道にはこうした駅が多く、今回廃止となる12駅中8駅が元仮乗降場だった。もともと利用客が多くなかったからそういう扱いだったのだが、そう考えると廃止となるのは避けられなかったのかもしれない。

 それでも待合室自体は古いものの室内はあまり汚れておらず、埃っぽくもなかった。木製のベンチの上には手作りと思われる座布団も敷かれていた。ここも利用客は1日3人以下だが、その割には思った以上に手入れが行き届いていた。

◆④北剣淵駅

 東六線駅同様、防風林に囲まれた北剣淵駅(北海道剣淵町)。周辺を少し歩くと数軒の農家は見かけたがホームからは視界が遮られているため、ここも人里離れた秘境駅のような雰囲気だ。

 北剣淵駅も駅舎はなく、ホームの手前に除雪用具置き場兼用の待合室があるだけ。ほかの駅と違って入口や外壁に看板など駅名がわかるものは一切かかっておらず、しかも建物は開業した1959年から同じままなのか相当年期が入っているのがわかる。昔の北海道ではよく見かけた風合いの作りで、レトロと言えば聞こえはいいが、鉄道ファンでなければ待合室であることにすら気づかなさそうだ。

 室内は壁の一部が剥がれており、すきま風が吹き込んで冬場は非常に寒い。だが、それが逆に人を惹きつけるのか駅ノートには、全国各地から訪れた鉄道ファンからのメッセージで埋め尽くされていた。

◆⑤下士別駅

 北剣淵駅から2駅、8.1キロ北に位置する下士別駅(北海道士別市)は、今回の12駅の中では待合室が一番広かった。

 同駅も平均利用客は1日3人以下なのにコの字型に設置された木製ベンチは、10人以上の大人数が座れる仕様。また、東六線駅のように座布団も敷かれていた。平屋建ての待合室の建物には屋根付きの自転車駐輪場が隣接。数十台は停められそうな広さだ。

 でも、調べてみると2011~2015年の利用人数は10人以下。宗谷本線沿線の中では比較的大きな士別と名寄に挟まれた場所にあり、最近までは通学で利用する高校生の需要があったと思われる。

 そもそも駅から徒歩10分圏内には15軒以上の民家があり、この辺の農村地帯にしては住民の数もまだ多い。とはいえ、こちらは完全な車社会。おまけにほとんどが農家のため、通勤で列車を使うような人はいなかったようだ。

◆⑥北星駅

 宗谷本線では3指に入る秘境駅として有名な北星駅(北海道名寄市)。旭川から89.3キロ北の天塩川と小高い山に挟まれた無人駅だ。

 ここは同路線とほぼ並行している国道40号線からも遠く、最寄りのバス停ですら3.5キロも離れているまさに陸の孤島。ただし、板張りの短いホーム以上に訪れる者の目を惹くのは、大きな赤いホーロー製の『毛織☆北紡』という看板がかかっている年季の入った木造の小屋だろう。

 北星駅の待合室になっているのだが、看板の企業は1973年に業績不振などの理由から会社整理に。つまり、消滅した企業の看板が半世紀近くも残ったままという、タイムスリップしたかのような駅なのだ。

 今回廃止が決定した駅の中では存続を求める声がもっとも多かったと言われており、「せめて建物だけは残してほしい」と要望する鉄道ファンも少なくない。

 莫大な負債を抱え、それに追い打ちをかけるコロナ禍での運賃収入激減でこれまで以上に厳しい経営を強いられているJR北海道。会社の状況を考えれば仕方のないことだが、2019年の夕張線、2020年札沼線北海道医療大~新十津川間のように毎年のように路線や駅の廃止が続くのもさびしいものだ。

 せめてもの供養というわけではないが、こんな駅があったんだと知ってもらえれば幸いだ。<TEXT/高島昌俊>

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。世界一周(3周目)から帰国後も仕事やプライベートで国内外を飛び回っている。

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